胡桃堂喫茶店

特集・弥生篇「食器」

見慣れないグラス

蘆龝

「そのグラス、どうなってるんですか?」

胡桃堂の朝モヤが終わった後、私を含む4人の参加者が残り、昼近い胡桃堂喫茶店で話の続きに花を咲かせていた。店員さんが、はちみつレモンのお湯割りをさりげなくテーブルに置いた。そのとき、一人がそう言ったのだった。その透明なグラスは、内側と外側の二重構造になっており、まるでグラスの中にもう一つグラスが入っているかのようだった。中空になっているところには空気が入っているのか、それとも真空なのかなどと、しばらくそのグラスの話題になった。

私がそのグラスを見たのは、それが初めてではなかった。そのグラスでドリンクを飲んだ回数は、一度や二度ではない。しかし、グラスのことが気になったり、疑問に思ったりしたことは一度もなかった。この出来事がなければ、そのグラスも世の中に無数にあるありふれたグラスの一つのままだっただろう。

急に、知らない場所にいるような錯覚に陥った。日々、どれほどのことを見落としたまま、私は生きているのだろうか。

蘆龝

胡桃堂の朝モヤはライフライン。