胡桃堂喫茶店

特集・葉月篇[令和五年]喫茶店とまち

遠くの芝生はバリ緑

大畑純一

よく言われる(気がする)のは、
海外旅行なんかでいちばんおもしろいのは
観光地や名所ではなく、現地民が暮らす日常を垣間見てその空気に身を置くことであるということだ。

そこに住み日々を営む人たちにとってはありふれたことでも、
遠くから来た人にとってはとんでもなくおもしろかったりする。
興味深さを通り越し受け入れられない境地もあるだろうが
その距離こそ世界の広さそのものである。

考えていったときに、
喫茶店には「日常」の可能性が広がっていると思った。
山間部にあるような喫茶店はまた違った、大自然やドライバーとの関係があるだろうが
都市部、とまでいかずともある程度まわりに人が住んでいるような街の喫茶店においては、その場所をもとにした物理的な関係に(近くに住んでいる人とか川が流れてるとかひっくるめて)想像以上の影響を受けていると思う。
影響を極力受けない店づくりもできるだろうが、やはりどこか不自然だ。
電車を降りて、歩いていって、喫茶店の扉を開ける。
でもどこからが喫茶店だったのかわからない。気づいたら温泉にでも浸かっているような、そんな姿が喫茶店として自然に思える。
(まさにそんな話を以前影山さんがしていました『喫茶店とはどこからか』

同じ街でもそうでなくても、近くに住んでいる人にとって
あるいはちょっと遠くても足繁く通ってくださる人にとって、
喫茶店はきっと日常だ。
それは<ケ>オンリーでもなく、<ハレ>の喫茶店すら彼らの日常に内包されているのかもしれない。

「由来あるもの」を大事にしようと考える胡桃堂喫茶店で
日常を育んでいきたい。

いつか観光客が言うかもしれない。

おもろ!

大畑純一(おおはた・じゅんいち)

スタッフ。チーム全体の庶務的なサポートを行う。普段お店に立つことはないが、週末はネコとして洗い場に入る。ネコという呼び方は、ネコの手も借りたい、に由来する業界用語として近年定着しつつある。

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