胡桃堂喫茶店

特集・睦月篇[令和五年]思い出のケーキ

思い出のケーキ

魂という名の野生動物

マジョラルとエルサマリアのみせには
くろひげの おおきなおとこと
ながいかみのけの しろいおんながいる

くろひげの おおきなおとこは
いつも みせのそと

ながいかみのけの しろいおんなは
いつも みせのなか

くろひげの おおきなおとこが おしえてくれる

いちばん ちいさい いすに すわると
ケーキが ゆっくり でてくるよ

ながいかみのけの しろいおんなも おしえてくれる

もりへ いってごらん
ともだちが たくさんいるよ

みなとへ いってごらん
みんなが まっているよ

きょうかいへ いってごらん
ケーキが でてくるよ いそげ

もりで あなをほって
みなとで にもつを もらって 
きょうかいに いく

くろひげの おおきなおとこと
ながいかみのけの しろいおんなの こえがした
あかりがきえた
よるのきょうかいから きこえる
かおは みえない
でも そこにいる
たくさん こえがする

きょうのよるも 
もりで あなをほって
みなとで にもつを もらって
きょうかいに いく

もう ひとりじゃない 
あさも さむくない
あめがふっても あったかい

マジョラルとエルサマリアのみせには
くろひげの おおきなおとこと
ながいかみのけの しろいおんながいる

もう ひとりじゃない
よるも さむくない
かぜがふいても あったかい

あさもよるも ケーキがでてくる
つぎのひも そのつぎのひも
きょうから そのケーキを じぶんでつくる
よるのきょうかいで

魂という名の野生動物

国が変わり、時代が移っても、なぜか同じ声がする。声は水を注ぐ仕草になり、花を活ける手になり、甘いものを分け合ったり奪い合ったりする。相手と初めて会ったはずなのに、ずっと前から知っているような瞬間がある。街の喫茶店、空港、異国の大聖堂、港町の酒場、上空の機内、下町の屋敷、高台の牧場、都会の蕎麦屋、等々。それぞれの声は交わらないまま、しかし響き合い、やがて別の場所を立ち上げます。そこにいるのは、似た選択で同じような後悔を抱き、迷い、胸を熱くする、名も立場も違う人々です。その記憶をここで静かに追いかけます。

 

これは、時間を超えて繰り返される、いくつかのいのちの物語です。


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