胡桃堂喫茶店

特集・卯月篇[令和五年]YOUは何しに喫茶店へ?

あかちゃんになる

魂という名の野生動物

なんどめかのやくそくをはたすため
おとうさんをしらないおかあさんが
おかあさんをしらないおとうさんと であった

「みずをいれますか」

まっすぐにつづくみじかいまがりかどをなんどもかけぬけ
みずがはいったガラスのかびんにいっぽんのひまわりがたどりつく

かわしたやくそくをひとつもおぼえていないふたりは
ここでこいにおちる

おちたこいからめざめ
あいへむかうのは
もうすこしさき

おかあさんとおとうさんを
おかあさんとおとうさんに えらんだ

だから あかちゃんになる
あえるのは もうすこしさきだけど

魂という名の野生動物

国が変わり、時代が移っても、なぜか同じ声がする。声は水を注ぐ仕草になり、花を活ける手になり、甘いものを分け合ったり奪い合ったりする。相手と初めて会ったはずなのに、ずっと前から知っているような瞬間がある。街の喫茶店、空港、異国の大聖堂、港町の酒場、上空の機内、下町の屋敷、高台の牧場、都会の蕎麦屋、等々。それぞれの声は交わらないまま、しかし響き合い、やがて別の場所を立ち上げます。そこにいるのは、似た選択で同じような後悔を抱き、迷い、胸を熱くする、名も立場も違う人々です。その記憶をここで静かに追いかけます。

 

これは、時間を超えて繰り返される、いくつかのいのちの物語です。


魂という名の野生動物さんの記事一覧

特集・卯月篇(四月)[令和五年] 記事一覧