胡桃堂喫茶店

特集・如月篇「喫茶店と本」

カフェオレの味わい

蘆龝

喫茶店に行くときは、必ず本を持っていくことにしている。電車で目的の駅に着くまでの間か、ドリンクを注文してからテーブルに届くまでの間くらいしか、本を読む時間はない。だから、一冊の本を読むのにだいたい半年くらいかかってしまう。

カフェオレを注文するやいなや、リュックから急いで読みさしの本を取り出す。カフェオレが来るまで、時間はわずかしかない。しおりが挟んであるページを開いても、文章はすぐには頭の中に入ってこない。ページを少し前までさかのぼって読み始めるのは、いつも少しもどかしい。

しばらく読み進めた後、ふと我に帰る。本を読み始めてから、あるていど時間が経った気がする。読書ができるのは、あと二、三分といったところだろう。ここで読むのを中断してしまったら中途半端だ。せめてもう少し先、キリがいいところまで読みたい。焦りを感じながら、右から左へ、文を貪っていく。このままカフェオレが来なくてもいい、とすら思う。

しかし、カフェオレがやって来てしまった。数分ほど名残惜しく本を読み続けたが、これ以上放っておくと、カフェオレの香りがとんでしまう。恨めしさを感じながら本を閉じ、一口飲む。頭の中は、今しがた閉じたページのことしか考えていない。あれはどうなんだろうか、これはこうなんじゃないか、もっとこうでもよかったんじゃないか……

気がついた時には、味わうことを忘れたまま、最後の一滴が喉を通った後だった。

蘆龝

胡桃堂の朝モヤはライフライン。