ホームパーティがそろそろお開きになってさ、みんなそれぞれ上着を着たり身なりを整えたりしてさ、それで、会場であるリビングルームから玄関に向かう間にさ、なんかまた30分くらい話しちゃったりすることありませんか。
ひどいときは、玄関から外に出て、その後ずっと立ち話してるとか。
お開かなければ良かったじゃない、と、その時には思ったりするんだけど、この、去りがたい気持ちを皆が共有してる時間は、パーティの本編では味わえないものなんですよね。これはもう、パーティとは別ものの何か。
共感してくれる人がいると思うんですけど、胡桃堂喫茶店のお会計にはこれと同じような魔力がありますね。
客席でずいぶん長いこと会話をしていたはずなのに、レジに行くとなぜか、また話を始めてしまいます。伝票をはさんである磁石の胡桃をパカッと開くのが魔力の発動で、代金を支払いながら、去りがたい気持ちになってしまうのです。
壁側の棚の上にもし飲み物が用意されていたら、手に取ってしまうかもしれません。そして、立ったまま飲み物を手に談笑する去りがたい人たちの輪が、レジのまわりにできるのです。