胡桃堂喫茶店

特集・霜月篇[令和四年]

誰もが住みよい街

大畑純一

幼稚園なんかで、お店屋さんごっこをやったことはあるだろうか。
おのおのが好きなお店を構え、お花屋さん、お魚屋さん、美容室、と並ぶ。
ほかの園児や保護者はお客さんとして楽しむ行事‥

果たしてそんな行事があったのか
自分の記憶なのか、定かではないのだが
私は人間社会に対してこのような見方をひとつ持っている。
つまり、立場なんてものは本来なく、みな楽しむために役割を演じているに過ぎないと。
高校の文化祭やキッザニアにも通じるイメージだ。

だから私は、
店員だから、お客さんだから、というよりは
同じ人として、一緒に生きている仲間のような感覚をどこか持って接することが多い。
もちろん店員を演じるのも楽しんでやっている。

胡桃堂喫茶店はやはり
お店とお客さんの垣根がないように感じる。

くるみを割ってくださるお客さん、
個人的にもお世話になっているすごく距離の近い常連さん、
よく遊びに来てくれる元スタッフ、
閉店後にミーティングの場として使うまちの仲間。
空いていれば、スタッフも客席で仕事をする。
それだけだとむしろクローズドなお店になりかねないが、
よく来てくださるが素性のわからないお客さんもいるし
もちろん数でいえば、名前も知らないお客さんのほうが圧倒的多数だ。

近い距離感を望まない人にとっても
居心地のいいお店でありたい。
さまざまなご縁や関係性が混在しつつ
お店自体がひとつの街のようである胡桃堂喫茶店が、私はとても好きだ。

大畑純一(おおはた・じゅんいち)

スタッフ。チーム全体の庶務を仕事の中心としながら、たまにシフトにも入る。ホールをうまく回せているときが人生で一番楽しい。ただ、脳のメモリが十分でないためよく混乱している。