「お店で会うあの人」
実はこのテーマを掲げたのは私なのですが、それは、あの人のことをどうしても書きたかったからです。
街でもよくお見かけします。
高齢の方なので、いつもゆっくり、歩いています。
よく来てくださるんです。
お一人でも、ご夫婦でも。
いつもご注文されるもの。
いつもお座りになるお席。
たまに違うメニューを試してくださること。
よく書店の棚に並ぶ本を手に取ってくださること。
まれにお席でうたた寝されること。
その姿に、私は、私たちは
あたたかいものを受け取っている気がします。
私たちのあいだでは
その方のことがよく話題になります。
多いときは毎日、ご来店くださるからというのもありますが
それ以上に話題にしたくなる魅力があるからのように思います。
私自身は、近しいスタッフと
お店の外でもその方の話をします。
昨日ね、そういえばさ、そんなふうにうれしく会話をしています。
不思議なのは、
直接その方と会話をすることはほとんどないということです。
ご来店いただいても、世間話をしていくような方ではありません。
ご注文の時にいただく「国分寺茶ください」の一言しか発されない日も多いです。
そしてお名前も存じてはいません。
だから、ということにも限りませんし
ここでお伝えできるお話にも限りがありますが、
その方とお店(の私たち)との関係を考えてみると
なんて幸福なことだろうと感じ入るのです。
今、こんな、お客さまとの関わりが
ひとつでもできていること。
嬉しさと感謝が込み上げてきます。