胡桃堂喫茶店

特集・水無月篇「2022上半期総集編」

「金継ぎ」はつづく

大畑純一

大畑(以下、大) (食器を)持ってきてくれたんだね。

保高(以下、保) あとで、追加で作業したいやつを。

大 あー、これからやるやつ。

保 結構使うじゃないですか、お店で。
  だから、剥げるのが嫌なので
  この上に樹脂でコーティングしてくって感じですね。

 

最近、保高君はシフトを上がると
お店の茶器やコーヒーカップなどをせっせと金継ぎし始める。
締め作業を終え疲れていないのだろうか。
集中した横顔が、閉店後の静寂とともにある。
今シーズンの総括をどうしようかと考えたときに
私は、三月の特集「食器」に「金継ぎ」を寄稿してくれた保高雅人君にインタビューしてみたいと思った。

 

大 壊れたものを、ただ直したっていうよりも
  なんかちょっとプラスアルファされた感じっていうか。

保 光ってるし。

大 (笑)

保 光るもの好きなんで。男の子は。(笑)

大 すごくきれいだよね。

保 いや、そうですね。嬉しいです。
  自分で新しく器を作っているような感じもあって。

大 はー、そういう感覚がある。

保 なんかそういうのもおもしろいなと思って。

大 自分の技量とかセンスによって
  出来栄えが結構変わってくるってこと?

保 そうですね、そういうのももしかしたらあるかもしれないですけど、
  割れ方によって完成が全然違うというか。
  模様って言ったらおかしいですけど
  割れ方欠け方で新しい色が足される場所が変わる。
  ぜんぶ違うので
  あ、これだったら雷みたいだな、みたいな。

大 そうか、そういうことね。
  割れ方が新しい模様になっていく。

 

形あるものは‥
なんて言葉に新鮮味はないが、
日々お店で何回転もする食器は
やはり何かの拍子に割れてしまう。
エントロピーは増大し続ける。

そこに、欠片を集めて
新しい食器へと生まれ変わらせる者が現れたらどうだろう。
見たことのない物語を紡ぐ彼は
食器たちの、私たちの希望の星だ。

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彼は、「金継ぎ」を寄稿してくれて以降も
個人的に経験を積み、
この五月にはお店の金継ぎを一任されるまでになりました。
これまでは私たちの技術が足りず直せなかった食器たちも
彼の手によって、続々とまた舞台へと繰り出していっています。

大畑純一(おおはた・じゅんいち)

スタッフ。チーム全体の庶務を仕事の中心としながら、たまにシフトにも入る。ホールをうまく回せているときが人生で一番楽しい。ただ、脳のメモリが十分でないためよく混乱している。