大畑(以下、大) (食器を)持ってきてくれたんだね。
保高(以下、保) あとで、追加で作業したいやつを。
大 あー、これからやるやつ。
保 結構使うじゃないですか、お店で。
だから、剥げるのが嫌なので
この上に樹脂でコーティングしてくって感じですね。
最近、保高君はシフトを上がると
お店の茶器やコーヒーカップなどをせっせと金継ぎし始める。
締め作業を終え疲れていないのだろうか。
集中した横顔が、閉店後の静寂とともにある。
今シーズンの総括をどうしようかと考えたときに
私は、三月の特集「食器」に「金継ぎ」を寄稿してくれた保高雅人君にインタビューしてみたいと思った。
大 壊れたものを、ただ直したっていうよりも
なんかちょっとプラスアルファされた感じっていうか。
保 光ってるし。
大 (笑)
保 光るもの好きなんで。男の子は。(笑)
大 すごくきれいだよね。
保 いや、そうですね。嬉しいです。
自分で新しく器を作っているような感じもあって。
大 はー、そういう感覚がある。
保 なんかそういうのもおもしろいなと思って。
大 自分の技量とかセンスによって
出来栄えが結構変わってくるってこと?
保 そうですね、そういうのももしかしたらあるかもしれないですけど、
割れ方によって完成が全然違うというか。
模様って言ったらおかしいですけど
割れ方欠け方で新しい色が足される場所が変わる。
ぜんぶ違うので
あ、これだったら雷みたいだな、みたいな。
大 そうか、そういうことね。
割れ方が新しい模様になっていく。
形あるものは‥
なんて言葉に新鮮味はないが、
日々お店で何回転もする食器は
やはり何かの拍子に割れてしまう。
エントロピーは増大し続ける。
そこに、欠片を集めて
新しい食器へと生まれ変わらせる者が現れたらどうだろう。
見たことのない物語を紡ぐ彼は
食器たちの、私たちの希望の星だ。
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彼は、「金継ぎ」を寄稿してくれて以降も
個人的に経験を積み、
この五月にはお店の金継ぎを一任されるまでになりました。
これまでは私たちの技術が足りず直せなかった食器たちも
彼の手によって、続々とまた舞台へと繰り出していっています。