私は現在、胡桃堂喫茶店の他にもう一つ喫茶店で働いています。どちらでも、少し勤めると、俗にいう「常連さん」の顔を覚えはじめます。
あ、いつもブレンドを注文する人だ。でもケーキはいつも違うから今日はなんだろう。
この人はコーヒーは食後派だっけ、ミルクを入れる人だっけ。
今日は日曜日だから夕方にあの人が来るかもしれないな。
こんなことを考えるようになります。
たまにお土産をくれる。いつも来てくれる。しばらく来なくても、ふらっといつかやってきて、また同じものを注文してくれる。
今日も来てくれた。よかった、まだ間違えてない。
誰かにとっての何度も行きたくなる「あの場所」としての矜持。変わりながら変わらずに存在することの美しさと難しさ。繰り返しているとつい忘れそうになりますが、「あの人」を見ると気が引き締まるのにどこか安心したりします。
自分もたくさん喫茶店に行くからわかりますが、何度も行きたくなるお店っていうのはそんなにたくさんあるわけではありません。何度も来てくれるあの人(たち)。そのありがたさと、そんな場所を提供できていることのすごさが日々身に染みます。
私は、気に入ったら同じところばかりいってしまうタイプで、そのおかげで新しい素敵なお店を見つける機会も失ってしまうのですが、まあそれはそれなんです。
自分がそのお店にとっての「あの人」になってたりしないかな、もうちょっと通ったらかな、なんて思いながらコーヒーを飲む時間。何も言わなくてもミルクがついて来なくなった時とかは謎の達成感が生まれますね。
言葉少なに、時間をかけてお店との関係が変化していく。そんなお店にこれからも私が、みなさんが出会えますように。それは思っているよりずっと素敵なことだから。