胡桃堂喫茶店

特集・弥生篇[令和七年]自分の時間を生きていると感じられるとき

孤独からの贈り物

さやかな風の調べ
柔らかな夜のささやき
祈りの花びらが舞う午前2時
息をひそめて ただ静かに
冷たくなりゆくその掌で
優しくそっと
己の孤独を撫でてみる

その時ようやく
私は自分の時間を以て
己自身と向き合うことができる
そしてまた
私の孤独がある時にのみ
私は貴方に逢うことができる
けれど
貴方とは誰か

永い時間
ただそこに在るということを望めば
人はやがて大きな泉の中で
美しき光と交わることもできるはず
そしてその存在を定義することで
己自身の光を知ることができるはずなのだが
その輪郭が鮮明になってゆくほど
己というものが失われていく
ような気がしているのです

        ◯

詩を書いている時、私は自分の時間を生きていると言えるのでしょうか。
詩を書くという行為の只中において、私は生きることが、果たしてできているのでしょうか。
言葉を生み出すことは酷く空虚な響きを震わせながら、ただ静かに、己の魂を切り刻んでいくのでしょう。
しかしそれは、孤独からのささやかな贈り物であると、私は思うのです。

ところで、あなたはどんな笑顔を素敵に思うでしょうか。
周囲へ振りまくような明るさを持つ笑顔も素敵ですが、
密やかに、何か大切なもののためにその笑顔を伏せている人は、とても魅力的であると私は思います。
それは蕾花を思わせる、あふれんばかりの喜びを湛えており、それが、雲の隙間から光が溢れるように花咲らく瞬間、私は本当に美しき命、その魂に触れたことを知るのやもしれません。

穏やかなるこの想いよ
ついに一輪の花となれ———

いつか花となる風を、この言葉で紡ぎます。
優しく穏やかな静寂の中で、静かな喪失と孤独に向き合い続けていく。
そこに灯るあたたかな揺らめきを見つめながら。