胡桃堂喫茶店

特集・弥生篇[令和七年]自分の時間を生きていると感じられるとき

祈りの時間

みうらゆみ

喫茶店で働きながら、「ひかるめんめ」という活動をおこなっています。
「ひかるめんめ」は、ふわふわの長毛のぬいぐるみで、心や記憶、いつかみた景色や音など、人々の暮らしの中の物々に宿る神さまです。
みんな「めんめちゃん」「めんめさん」と呼んでくれます。
めんめには一匹一匹に異なるタイトルと、その子が属するシリーズごとに詩を添えています。

めんめを縫い、詩を書きながら、ぼろぼろ涙が止まらなくなることがよくあります。
めんめを生み出すことは、自分の本当の気持ちと向き合うこと、かなしみも、痛みも、喜びも、心からえぐり、取り出し、めんめというフィルターで濾過し、浄化することです。

陽だまりに眠るような穏やかな時間も、好きな人たちと笑い合う時間も、道ばたの花が教えてくれる季節の訪れも大好きです。
ですが、それ以上に、目に映る感情や指先に触れた温度、交わした言葉、叶わない約束、二度と戻れない過去の記憶と向き合うこと、そんな抱きしめようとしても腕からすり抜けてしまうかたちのないものに「ひかるめんめ」という祈りを託す時間、わたしはどうしても生きていると感じてしまいます。

星が夜空にまばゆい輝きをもたらすように、きっと、暗やみでしか見えないひかりがある。
心の中にすむ痛みやかなしみは、本当は、こんなふうに柔らかなかたちをしている。
あなたからこぼれた涙は、いつの日かかならず確かな道しるべになる。

あなたもわたしも、いつか大丈夫になる日が来ると信じて。
今日も祈りながらめんめを生み出しています。

みうらゆみ

胡桃堂喫茶店スタッフ。クリームソーダと文学と夜に吹くしゃぼん玉が好き。毎日大量のぬいぐるみをかばんに詰め出勤している。