胡桃堂喫茶店

特集・師走篇[令和七年]忘れられない1杯

表現すること、表現しないこと

大畑純一

今年の「胡桃堂喫茶店の縁日」でとても嬉しいことがあった。

お店の内装でいつもお世話になっているYさんが
その日お客さんとして来てくれた。
帰り際、Yさんは
輪投げの店番をずっとしていた私のところにきて
店内で販売していた缶ビールをこれ差し入れ!おつかれさま!と言って渡してくれたのだ。
みんなに配ってたわけじゃなく、私にくれたのだ。

それまで正直、Yさんに私個人が認識されていると思っていなかった。
挨拶とその延長くらいしかこれまで関わりがなかったから
「スタッフA」としか思われてないと思ってた。
だからなんだかすごく嬉しくて、ありがたくて、ずっと心に残っている。

喫茶店に来る人の中には
私個人を認識しないでほしい人もいると思う。
私のことを誰も知らない場所だから、来ている人がいる。
だから一線を引くべきところを見極めないといけない。
でも根底にはやっぱり、もちろん、ただ一人のあなたと認識していつもいたい。
そのあわいのなかに
いいお店ってある気がする。

大畑純一(おおはた・じゅんいち)

スタッフ。チーム全体の庶務を仕事の中心としながら、たまにシフトにも入る。ホールをうまく回せているときが人生で一番楽しい。ただ、脳のメモリが十分でないためよく混乱している。


大畑純一さんの記事一覧