胡桃堂喫茶店

特集・師走[令和四年][2022年下半期 総集篇]

この特集って、なんなのか

影山知明

この2022年下半期も、うたあり、エッセイあり、フィクションあり、インタビューありと、バラエティ豊かで粒そろいの原稿が並びました。ご投稿くださった方々、ありがとうございました。

それらの中から、どれをイチオシ!記事に選んだかについては、動画をご覧いただくとして、ここではこの「特集」という場にかける思いを少しだけ。

胡桃堂の新しいウェブサイトをオープンさせるとき、キーワードとして「衝動」と「パラレルワールド」という2つのキーワードがあがりました。その背景には、SNSがこれだけ普及し、即時的な、あるいは告知的な情報を伝えるだけであればそれで用が足りるという今日にあって、ウェブサイトを一つの「表現の場」と捉えたい思いがあったのです。

そう考えたとき、喫茶店やカフェのような場の面白さが、先の2つの単語で表現できるように思ったのです。
一人一人が、社会の枠組みから少しだけ自由になり、自らの内発的な衝動に基づいて、いろんなことを感じたり考えたり、自分自身の時間を過ごすこと。自分なりの表現を始めるきっかけとなること。
同じ店で同じときに同じ時間を過ごしているように見えて、実は一人一人が、それぞれにしか流れない時間を自由に過ごしていること。それはまるで、それぞれがパラレルワールド(並行世界)を生きているようであること。

そんな場って、世の中見渡しても、他にほとんどないよなって思いとともに。

それらがこの「特集」にこそ、一番端的に表れているよなと思うのです。

ぼくはこの場を使って、「喫茶店・カフェの現場の工夫や苦悩やノウハウ」を伝えらえたらいいなと思っています。後に、こうした場づくりに向き合おうとする人たちへの指南書になるようなものを残せたらなと。他の執筆者たちも、それぞれにテーマがあるようなないような中で、そのときどきの衝動に任せて、原稿を放り込んでくれています。その一つ一つを読むと、それぞれがそれぞれの世界を生きているのだということが伝わってきます。でもそうした中に、共通して流れる色やリズムみたいなのがあることもあって、そういうのって面白いなと思ったり。

この「特集」にはどんな方でもご投稿いただけます。
「何を書いたらいいのか分からない」というのは、よく一番いただくご質問ですが、そここそが大事な第一歩です。だって、生きること自体、そういうところあるわけだから。「どう生きたらいいのか分からない」って。
でも、その投げかけに向き合っているうちに、なんとなく自分の内側から湧き上がってくるものがあることがあるわけでしょう。

一番残念なのは、その投げかけや問いをなかったことにすることです。苦しいからって。実際、ちょっと目を背ければ、「やらなきゃいけないこと」「やるといいと言われていること」が、いくらでもまわりに溢れる今日ですからね。そうした方向に自分の時間を仕向けているうちに、あなたの内なる声はどんどんしぼんでいきます。

「自分なりの表現をする」──その第一歩として、この特集の場を活用してもらって、このウェブサイトからも、この世界に流れる色とりどりの時間が感じられるようになったらうれしいなと思うのです。

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影山知明(かげやま・ともあき)

胡桃堂喫茶店 店主。お店には、毎週だいたい土曜か日曜にシフトに入る。でもできることが少なくて、他のスタッフには迷惑がられることが多い。でもやめない。好きな言葉は、「ゆっくり、いそげ」。50年続くお店づくりを目指している。
Twitterアカウント:@tkage