胡桃堂喫茶店

特集・皐月篇[令和七年]心がデカめに動いたとき

はらぺこあおむし

(な

「はらぺこあおむし」と出逢ったときのこと。
いまでも鮮明に覚えています。
これまでの人生でいちばんの衝撃だったかもしれません。

その日は、幼稚園最後のクリスマスイブ。
「あおむし」は、両親からのプレゼントでした。

そもそもウチの両親は本好きで
家の中は、その当時から本ばかり。

ちょっと家族で出かける先は
だいたい本屋か図書館でした。

その頃、よく読み聞かせてくれたのは
昔話に童話、宮沢賢治に水木しげる、怖い話、そして戦争の話。

いまではそれぞれのよさ、大切さが分かるようになりましたが
幼かったわたしは、みんなが読んでいたような絵本の定番
せなけいこさんの「ねないこ だれだ」や
ノンタンも読んでみたかったのでした。

また、家にはたくさんの絵本がありましたが
従兄弟や兄弟たちのおさがりばかり。
末っ子のわたしのところに流れ着いたものは
らくがきや破れ、黒塗りは当たり前でした。

仕かけ絵本は、仕かけは壊れ
クライマックスのページが
のりでくっついて開かない本もありました。
(ある意味、仕かけ絵本?)

そのこともあって
新品の「はらぺこあおむし」の
真っ白なページと
そこに生き生きと描かれる色鮮やかな あおむしたち

そして、あおむしが食べ残した食べ物の絵に
わざと開けられた穴の
美しいかたちに、心が大きく震えました。

サラミ、ピクルス、さくらんぼパイなど
外国を思わせる、食べ慣れない美味しそうな食べ物も
魅力的のひとつで

ちいさかったあおむしが
おなかいっぱい食べて蝶になるという
シンプルでハッピーなストーリーは
こころが太陽の光で満たされるような
しあわせな気持ちになりました。

 

**

その後、成長の過程で事あるごとに思い出してきた「はらぺこあおむし」。

大人になって、特に本に関わる仕事についてからは
「はらぺこあおむし」が一種の共通言語のようになり
あおむしをきっかけでつながるご縁も増え
人生に大きな彩を添えてくれる一冊となりました。

「はらぺこあおむし」日本語版40周年の節目の年
エリック・カールさんに逢えたときは
本当に嬉しかった。

そのとき一緒に撮っていただいた写真。
サイン入りの「はらぺこあおむし」とともに、すぐさま封印しました。
一生の宝物です。

(な

猫と暮らして数十年。
いつか猫に好かれる人になりたいと日々精進中。


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