突然の雨だった。
曇天にわかにかき曇り、、、からの叩きつけ。ポツ、ポツン、ボツン、ザアーッドドドドドドド,と、まあはやいはやい!慌てて逃げ出した。さっきひんやりした風が吹いた時、嫌な予感はチラとしたんだが。
しぶく足元は濁流に化ける。
ぼやける視界の先に、小さな鳥居らしきものが見える。兎に角めがけて猛ダッシュ。
助かった!お社の軒先は思ったより長く、雨宿りには最適だ。それほど大きくはないが、きれいに手入れされている。ずぶ濡れなので躊躇したが、会釈して靴を脱ぐ。
肌寒さを感じて、リュックから上着を出そうとゴソゴソ。お賽銭も、、と思って財布の中を見るが小銭が無く、かと言って緊急用の諭吉さんはさすがに、、。あ!行きがけに買った豆大福があるじゃないか!
ウインドブレーカーを羽織り、いそいそと豆大福を取り出す。包みを開き、一つは自分に。もう一つは神様に。扉は閉まっているので、手前にお供えする。これうちの近所の和菓子屋さんので、とっても美味しいんです。よかったら、是非。あっついお茶があれば最高なんですがね。
それにしても。
視界の端から端まで間断なき水柱。ゴオオオオッて、雨音のオノマトペじゃなかったよ?少なくとも、自分が子供の時は。まるで川や滝のそれ。
そう言えばこの景色、滝の裏から見るのに似てる。確か群馬の、、。
轟音と果てない流れ。強制的に入ってくる音で満たされ、自我が薄れていく。
轟音。
轟音。
、、あの人の顔が、ふと浮かぶ。
ザアーッサアーーッポツンポツンポツポツポツ、、、。
始まり同様、終いも急だった。雲間から光が差し、その向かいに虹が出る。
ふと我に返り横を見ると、お供えの豆大福が無い。代わりにちょこんと梅の実が。ほんのり赤く、ぷくぷくと熟して芳しい香りがする。
破れないように、そっと手に取る。
荷物をまとめて、一礼。お社を後にする。
なんか,憑き物が落ちたみたいだ。歩きながら、笑みが湧く。
ああ、熱いお茶が飲みたいな。忙しすぎてちっとも行けてなかった、あの店へ。行こう、今すぐ。
スガスガと洗い落とされた世界。
虹はまだ、消えない。