大学時代、1限と5限で履修を組んで、わざと空きコマを作っていた。1限が終わって5限が始まるまでの10時半から16時半、およそ6時間の自由時間ができることになる。
そんな日には、例えばこんな1日を過ごす。
まず、大学の図書館の隣りにできたタリーズで、生クリームが高く盛られた飲み物を飲む。糖分を補充したら、建てられたばかりの図書館に行く。読みたい本がたくさんあるけれど、また今度。私がまっすぐ向かったのは、DVD視聴エリアだ。
良質な映画作品が揃っているこの場所では、自由に、そしてもちろん、無料で映画を鑑賞できる。スタジオジブリ作品(だいたい先に鑑賞されているが)をはじめ、洋画の古典作品や小津安二郎作品も。眺めているだけでも心地良いタイトルばかりだ。
私はここで、映画を知ったのかもしれない。
全米が泣かないタイプの、山寺宏一さんが告知CMのナレーションをしていないタイプの、ハリウッド俳優が来日しないタイプの映画。(偏見強めでごめんなさい。山ちゃんのことはすごく好き)
そういう映画は、作品世界に静かに連れていってくれる。そして鑑賞後、私は現実世界にもたしかに存在していることに気づく。
...そういう映画、最近観たかなぁ。ちょっと思い出せない。
もちろん映画そのものは楽しんでいる。国宝も観たし、鬼滅だって観た。鬼滅は2回観た。
でも、あの時の映画体験を思い返すと、懐かしくて、さびしい。
「映画を観たい」と思う。
そんな瞬間が、私にはある。