―喫茶店は、さまざまな惑星から流れついたひとびとが羽を伸ばせるオアシス―
西国分寺の森をすぎて、きょうはいつもより遠くまで流れてしまった。
こくぶんじ星 胡桃堂喫茶店…?
扉をあけると、中ではいろんな音が聞こえる。
じぶんがしらない星で生きている人がいる…。
ひとりで来ている人もなんにんかいるみたい。
鞄の中に忍ばせたふわふわのぬいぐるみをテーブルの上に出す。
ちょっと恥ずかしい。
クルミドコーヒーのくるみわりさんがいなくて、ちょっぴりふあんそうなぬいぐるみ。
縫いあとが目立つからだ。糸がほどけてきてる…。
ぬいぐるみと来たよって写真を、しゃっと撮って、すこしキョロキョロして、また鞄の中にかくす。
だれか、気づいている人はいるのかな…
店員さんにはばれてる?
はじめての場所は、いつもちょっと、ゆうきがいる…
ちいさな足音がして、胡桃堂ブレンドがはこばれてきた。
こくぶんじ星の、深い泉のように青い眼をした店員さん。
ぱちりと目が合う。
胡桃堂ブレンドを一杯のんで、まぶたを閉じた。
~~ぬいくるみ堂喫茶店にようこそ~~
「お待たせいたしました。ふわふわの、ぬいくるみでございます」
くるみをふわふわしたクリームとメレンゲでつつんだ、ぬいぐるみのようなお菓子が出てきた。
たべると、ふわっ
羽を感じる。
見渡せば
ちがう星の、むっ、としたかおのひとも、たべるとふわっ…ほほがゆるんでる。
あまいもの、こわいかおしてたべるのって、むりだよね。
まばたきするくらいの時間にうまれる、ふわっ…
いたずら好きの妖精になったみたいな、むじゃきなじかん。
「ぬいくるみは、ひととひとの間を縫う、お菓子です」
傷あとを想いながら、やさしく縫い直されたからだを、おもわずぎゅっとした。