胡桃堂喫茶店

特集・如月篇[令和七年]喫茶店

スピッツと根っこ

きときと

スピッツのボーカル草野マサムネは、生真面目で丁寧なロッカーです。ロックをこよなく愛し、ロックを遂行するために、のどのケアを欠かさないし、3時以降はカフェインを取らないし、公衆のトイレもきれいに掃除して出てくるほど、品行方正なロッカーです。

そのスピッツの曲が、朝の開店準備の時にかかる。お店はオープンするとクラシックがかかっているから、その時間は、ちょっと大衆的というか世俗的というかフランクな雰囲気になる。でも草野マサムネのロック道とお店の手を抜かない感じは近いと思っていて、その組み合わせが私には妙に面白く感じられる。

草野マサムネのロック道と胡桃堂喫茶店は、本当に大切なことを遂行するためには、ただひたすら日常の手順を確実に行っていくところが近い。日々の営業がお店の根っこ。根を張るためには、「日々の行動がすべてだ」とこのところ思う。そして張った根を維持していくのも日常の行動なのだと思う。

野球の大谷さんのマンダラートの話がよくなされるけれど、マンダラートを書くことがすごいとかそれだけ自分の道が定まっているのがすごいとかうらやましいとかそういうことではなくて、日常の行動がすべて自分の種につながっているから大成しているという話なんだと思う。

スピッツの『グリーン』という曲には「今芽吹いたばっかの種、初めて見たグリーンだ」という歌詞があって、その人その人の種がいつ芽吹くかは分からないけど、日常の行動が、自分の種につながっていると知ることができたら、世界の見かたが変わってくるように思うのです。

と、こんなことを朝の開店準備の掃除をしながら勝手に思考している。開店準備の掃除は動く瞑想です。

きときと

胡桃堂喫茶店で働きながら、学校で授業をしたり、自宅で子供や大人の話を聞いたりしている。ここ最近は「文体」という言葉を探究している。