胡桃堂喫茶店

特集・如月篇[令和七年]喫茶店

神田伯剌西爾

大畑純一

たしかあれは神田伯剌西爾(ブラジル)だったと思う。
へえここかあ、とわくわくしながら、角っこの席に通された。

友達の友達だった関くんと会うのは2回目くらい。
だから仲が良かったわけではなく、
こういう喫茶店をよく知る関くんが「じゃあ連れてってあげるよ」と、ウブな私を案内してくれようという約束だった。

「普段休日は何してるの?」なんて会話から始めるつもりだったわけじゃないけれど、
まずはお互いのことを知りあう時間が来るのだと無意識に思っていた。
でも関くんは席につくなり開口一番
「やっぱりタンカーの輸送力って半端ないらしいね」
みたいな、もう覚えてないのでこれは全くの適当再現だけど、当時の私にとってはそれくらい具体的で突然の話題から始まって、その勢いのままどんどん話が展開していった。
ものしりな関くんがとてもかっこよく見えて、間柄なんて関係のない会話に花を咲かせた。

男同士が遊びや仕事を企てるアンダーグラウンド。
楽しくお喋りだけではない、ブラックコーヒーからもくもくと何かが創造される場所。
そんな一面をとくに私は魅力的に感じる。
あそこが「喫茶店」じゃなかったら
関くんとのお喋りをこんなに覚えていなかったと思う。

まだまだ喫茶店のことを知らない。
そこにいる人が、何を見ているのか。

大畑純一(おおはた・じゅんいち)

スタッフ。チーム全体の庶務を仕事の中心としながら、たまにシフトにも入る。ホールをうまく回せているときが人生で一番楽しい。ただ、脳のメモリが十分でないためよく混乱している。