胡桃堂喫茶店

特集・葉月篇[令和六年]縁日

宝もの箱

山口吉郎

日々の暮らしは幸せに満ちあふれ、未来は希望で輝き、この命を存分に謳歌している。

そう感じながら日々を生きられたらどんなに素晴らしいだろう。なかなか難しいけれど。

暮らしの中で幸せを感じる瞬間、その幸せをぎゅっと握りしめて宝もの箱にしまうのだ。

2018年夏、胡桃堂喫茶店の縁日。今でもたまに娘と縁日の話をする。流しそうめん、紙相撲大会、オルゴール、チョコバナナ、クリームソーダなど娘にとって初めてのことが沢山あった、とても特別な一日。家族で縁日を楽しんだ一日を僕も娘も宝もの箱にしまっている。そして、たまに分かち合う。

この先、成長した娘は新しい感性で宝ものを握りしめるだろう。

宝ものを宝もの箱にしまって自分だけのものにすることなく、みんなが、みんなの宝ものを分かち合うことは素晴らしいと思う。宝ものの輝きは、明日を照らしてくれるはずだ。

山口吉郎

国分寺に暮らし、本のデザインに取り組む日々。芸術を考えるとき、アルベルト・ジャコメッティを想う。

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