「カラーンカラーン」
午後3時になると、この村はチャイムが鳴る。
チャイムが鳴ると一斉にみんなお茶をしに街に出てくるのだ。去年の選挙で馬の村長になってから、「自由時間の拡大」という政策で、午後3時にはみんなで休憩をしようということになったのだ。
昼寝をしたり、本を読んだり、調べ物をしたり、三々五々、好きな時間を楽しむ。一番人気はティータイムだ。職場や家庭を離れ、みんな好きなお店や公園でお茶を楽しむ。そんな午後3時の過ごし方が人気だ。
毎日、人が集まるのは「あひるのおばさんち」。
「あひるのおばさんち」は洗濯屋さん。午後3時とは関係ないんだけど、みんなあひるのおばさんが好きで集まってくる。
おばさんはみんなの話を「そうなの。そうなの。」と聞いて、最後に話した人が元気になる香りをちょっと付けてくれる。洗濯屋さんだから香りに詳しいんだね。
その日の午後3時もみんなは「あひるのおばさんち」に行っておしゃべりを楽しんでいた。
向こうからクジャクの奥さんが赤ん坊のクジャクを連れてやってきた。この辺ではあまり見ない、珍しいクジャクだ。ふっと「あひるのおばさんち」の前を通るとき、奥さんが羽を広げた。羽は確かにメスのものだったんだけど、妙に美しくてみんな話をやめて羽に見入った。
「あら、かわいい子だね」おばさんはクジャクの子にそっと近づくと、金木犀の香りを付けてあげた。みんな一発でその子のことを好きになったし、特別な子になったんだ。クジャクの親子はおばさんに会釈をすると去っていった。
「おばさん、特別な子だったね」とクマが言うと「子供はみんな特別よ」とおばさんは言った。自分も特別な子だったんだなとうっとりしたクマでした。