胡桃堂喫茶店

特集・葉月篇[令和七年]

夏はいい

カエサザル進藤

夏が好きだ。

どのくらい好きかというと、他の三つの季節がなくてもいいと思うくらい好きだ。

夏はいい。
まず、暑いのがいい。
暑いというだけで気分が良くなって、かなり多くのことを許せてしまう。
細かいことがどうでも良くなってしまう。

それから、日差しがいい。
夏の日差しは、とにかくかっこいい。
強い光が作る明暗のコントラストが、僕の住んでいる世界をかっこよくしてくれる。
自転車や、雑草や、金網や、アンテナや、ポストや、日常のなんでもないものが全部かっこよくなる。

さらに、濡れても大丈夫。
冬に濡れるのはかなりサイアクだけど、夏は濡れても気にならない。
気にならないどころか、むしろ喜んで濡れに行くだろう。
あえて濡れにいける季節。それが夏。

そして、生命の躍動を感じる。
夏に感じるのは、力強さだ。「負けないぞ!」と思う力だ。
寒いときの「負けないぞ」は、耐え忍ぶタイプ。
でも夏の「負けないぞ」は、跳ね返すパワーだ。
自分も何かを発して、みんなもそうしていて、そうやってそこら中で弾けている空気が、僕を嬉しくさせるのだ。

加えて言うなら、夏は速い。
ゴミ収集所の生ゴミが腐るのが速い。
コンクリートの上でミミズが干からびている。
暮らしていて無常を感じる瞬間がとても多い。
そういうのも、なんだか自分の中身が活性化するような気がする。

とにかく、夏はいい。
反論は受け付けないが、夏が嫌いな人の意見は聞いてみたい。

カエサザル進藤(カエサザルしんどう)

カタカナ+苗字っていうペンネームをみんな持ってて、ちょっとうらやましくなりました。だけどみんなの漢字部分は、苗字じゃなくて駅名だったことに気がつきました。そしてカタカナ部分は食品名でした。気がついたんだけど、この名前が気に入ってしまったので、そのまま使ってみることにしました。


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