ある日の午後、胡桃堂の一階席に僕は座っていた。
高い天井の窓から日が差し込んで、一階席のテーブルにはほんの一部分にだけ日だまりができている。
ふと気づくと、その小さな日だまりにすっぽり収まるように、水の入ったグラスが置かれていた。
考え事に夢中の僕に気をつかって、スタッフの方がそっと置いてくれたのだと思った。
その様子があんまり素敵だったので、思わず写真を撮った。
僕は自然に、これはわざと日の当たるところに置いてくれたのだろうと思ったけど、どうなのだろう。確かめたかったけど、誰が置いてくれたのかもわからないし、忙しそうにしている他のスタッフの方にわざわざ聞くのもはばかられる。
だから、そのままにしておくことにした。わざと置いてくれたのだということにして、その日もその次の日もそのまま過ごした。
そういう大きな輪をいくつもいくつもくっつけたまま生きていこうと思っている。たぶんいつかきっと、確かめられる瞬間が訪れる。そうしてそのときに、やっぱりわざとだったのだと思ってにっこりするの。