胡桃堂喫茶店

特集・卯月篇[令和七年]

土と、水

影山知明

#国分寺の土になる
2024年末、自分にとって2冊目となる『大きなシステムと小さなファンタジー』を発刊して以来の自分のスローガン。

カフェづくり、シェアハウスづくり、まちづくりなど、国分寺以外での仕事を依頼されることがあっても、受けない。自分の時間とエネルギーは、すべて国分寺に使う。逆に、このまちで起こることで、自分が受け止められそうなことには労をいとわない。そして、自分が自分がと、自分のやりたいことを実現するというよりは、まちの仲間のやろうとすることを受け止め、支え、一緒になって育む存在になる。種を受け止める土。そういうイメージでもって、今の自分の役割を捉えている。

種や土、そうした自然界のアナロジーで考えていくと、水って大事だなって思う。
まちをめぐる存在。
土があんまり動き回れない分、水が流れて、めぐって、いのちをつないでいく。ときには種を、それが根付くといい土へと運ぶ。そして種のいのちの源ともなる。

もう一つ大事なのは、水には垂直軸がある。
土中深くにたまれば地下水となり、気化して大気中にのぼれば、雲を経て雨となる。
これはぼくのイメージでいうと、時間をまたがるということ。ぼくらが見る湧水も雨も、それらはかつてそこにあった水の記憶なのだ。
種も土も、今を精一杯生きる。水だって今を精一杯生きるのだけど、そうした記憶を時を超えて運んでもくれる。

空間をめぐる水
時間をめぐる水

#国分寺の水になる
出会えたらいいなと思う。

影山知明(かげやま・ともあき)

胡桃堂喫茶店 店主。お店には、毎週だいたい土曜か日曜にシフトに入る。でもできることが少なくて、他のスタッフには迷惑がられることが多い。でもやめない。好きな言葉は、「ゆっくり、いそげ」。50年続くお店づくりを目指している。
Twitterアカウント:@tkage