先月、ひっこしをした。
ひっこしといっても同じ市内で、もともとおじいちゃんとおばあちゃんの家だったところ。
はじめて、家族4人の家ができた。
庭にかぼちゃがあった。
ひっこす前に母が庭に植えていた種が、実をつけたのだ。
この家とわたしは、ほぼ同い年らしい。
うんとちいさい頃、妹が生まれるまでの間、この家に預けられた。
近所の山口さんはそのちいさなわたしの記憶で止まっていて、この間挨拶に行ったら「大きくなったから、もうわからないねぇ」と笑ってた。
夜寝ない子だったから、おばあちゃんには手を焼かせた。
おばあちゃんと呼ばれるのを嫌がっていた、つやちゃん。
そんなつやちゃんも、いまは認知症で施設にいて、わたしを憶えていない。
その名前を呼ぶことも、なくなってしまった。
おじいちゃんは去年亡くなっている。
ちょうど去年のクリスマスに、お葬式をした。
新しく壁紙を張り替えた、みつおじいちゃんの部屋。いまはわたしの部屋。
2年前くらいに作りかけていた人形を、この部屋で生まれ変わらせる。
もともとサンタさんの帽子だったものを、いちごみたいな帽子にする。
おもいがけず、みつじいそっくりになった。
俳人だったみつおじいちゃん…。
この家に越すまでは、ずっとひとり暮らしをしたいと思いながらもできないでいたのに、いまはできるだけこの家で暮らしたいと思ってしまう。
これからこの家を出て、他の誰かと共に暮らすことがあるのだろうか。
ずっと、じぶんだけ時間が停まったように、おんなじ場所で足踏みしつづけているような気がする。
ケンカもできず、ことばを伝えることさえできない。
それがいちばんつらいことなのだとしる。
ほんとうに、傷ついたり傷つけたりすることに弱すぎる・・・・・・
庭に植えた種。
結局、かぼちゃだと思っていたものはメロンだった。
母自身がびっくりしていた。
メロンは硬くて、さっぱりした味。
すごくおいしいというわけじゃないけど、ちゃんとメロンだった。
ただそれが、うれしかった。