胡桃堂喫茶店

特集・葉月篇[令和七年]

Jupiter

とりがすきー川越

長岡花火、最終日。
義姉と土手に向かう。
男衆はすでに"出来上がって"いる。子供らはゲームに夢中。義母は疲れたのか、もう休むと言う。構わんから、あんたさんらで行っといで、と。

打ち上げを待つ人々がちらほらと集う。会場からかなり離れていても、遮るものがほとんどない。家から敷物や簡易型のイスを持ち出し、ビール片手に団扇パタパタ。あたりはまだ明るく、蒸している。
ご近所さんに声をかけたりかけられたりしながら、あねと共に、もう少し大きな橋まで歩く。

「おーい。」顔見知りらしい女性が手招き。あれ、ひとり?うん。うちの旦那なんかベロンべロンでもう寝てるがーてw。うちもうちも。あ、こっちは東京のいもうと(正確には埼玉)。〈会釈会釈。〉それにしても、ばっかあっちぇーて?

ひゅーーー、、、ん。
高音が空を貫く。一斉に、仰ぎ見る。

欄干にもたれる3人。
誰かが中継を流す。
「、、、大スターマイン、打ち上げ、開始でございます!」
夜が、じゅんじゅんと濃さを増す。

 

閃光の合間。見渡すと、あちこちに1人で来たらしい女性の姿。皆思い思いに見上げている。

何故だろう。胸が締めつけられた。
同胞はらから。今ここで空を見上げる影は、おしなべてこぼるることなく。
それでいて、ひとりだ。たまらなく、たまらなく、独りきり。

ラジオから、平原綾香の歌声。
あねが静かに、泣いている。

とりがすきー川越

都内で生まれ、3歳から川越。
ほぼほぼ川越人。
でも愛しているのは、ぞうきりん。


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