「ママ、絵本つくったよ!」
そう言って、突然目の前に差し出されたのは、アンパンマンの塗り絵2枚をセロハンテープでくっつけただけのものだった。それが娘の1作目の絵本。
「ねえ ママ 一緒にゆうきちゃんがつくった絵本読もうよ」
「ゆうきちゃんが絵本読んであげるね」
それから1週間、彼女は何度もその絵本を広げて、お話を聞かせてくれた。いつも違うお話をして、私を楽しませてくれた。
2作目は、いきなり力作になった。
明るい色の色画用紙を四角く切った3つの紙片をセロハンテープで丁寧に貼り合わせて本を作り、そこに月や星、ハートを型取って切った紙片と、庭で摘んだ花を丹念に貼り付けた本で、ハートはレインボーカラーに色が塗られていた。
そんな宝物を詰め込んだご褒美みたいな本を私にプレゼントしてくれた。
題名もない
表紙もない
文字もない
形がいびつで揃ってない
ページもめくれない
きまったストーリーもない
だけど、圧倒的な存在感で、眺めているだけでキラキラの物語を映し出してくれる絵本。
本って、こんなに自由なんだっけ。
人の発想って、こんなに自由なんだっけ。
あらためて、ファンタジーが人から生まれるものだということに納得をする。
娘の世界に広がるファンタジーに出会い、私の中に埋もれていたファンタジーに気付くことができた。
本来、私たちはもっと自由だったよね。