かつて「お水職人」だった、今は4才の娘。
ひとりで歩けるようになった1歳過ぎの頃、彼女は水を発見すると、目を輝かせて駆け寄り、水と対峙していた。
歓喜の声をあげることもあれば、神妙な面持ちで向き合っていることもあった。
彼女の水さばきは緩急自在だった。
短い人差し指を突き出してちょんちょんと波紋や濁る水を観察することもあれば、ぷっくりした手刀で水をはらい、水しぶきを飛び散らすこともあった。
大きく開いたパーの手で垂直に叩きおろして、返り血ならぬ返り泥水を全身に浴びて大喜びもした。
もちろん足さばきだってなかなかのものだった。
茶色い水たまりの上を、歩く、蹴る、すり足、ジャンプ!
水深が0.5㎝ぐらいしかない水たまりでも、凄まじい破壊力だった。
そんな風に日々、芸を磨いていた彼女だったが、いつのまにか足を洗っていたことに、今さらながら気付いた。
まだ4才なのに。
早い、早すぎるぞ。