<<1月20日>>
「明後日、お弁当やりますが、変わらずご注文で良いでしょうか?
12時半には胡桃堂喫茶店でピックアップできるかと思います。」
年の瀬に教えてもらった『愛情押し付け弁当』注文確認の連絡だった。
「(お弁当を作っている)『ぶんじ寮』まで自分で受け取りに行っても大丈夫でしょうか?」
と返信した。
<<1月22日>>
午前中の仕事を終えて、少し緊張しながら『ぶんじ寮』へ向かう。
「こんにちはー」
中へ声をかけて扉を開けてみる。
まだお弁当の配達から戻ってきていないようで、食堂には誰もいなかった。
薄暗い室内、大きな窓から外の冷気が伝わってくる。
静まりかえったキッチンを覗き込んでみると、全力でお弁当を作りきった形跡が残っている。
洗いながら待ってみようかな?などと考えていたら、外から「ただいま!」と明るい声がした。
お弁当代の600円は、貯金箱のような缶に入れる仕組みだった。
チャリン、チャリンとどこか懐かしい音が響く。
「注文ありがとう」と言葉をかけてくれた。
その日は、そのまま食堂で一緒にお弁当をいただいた。
食事をしながら、お互いに感謝し合い、これ美味しいねと声を掛け合い、たくさん笑う。
かと思えば、突然真剣な表情で今後のオペレーションをどうすればより良いかを話し合う。
そして、また何気ない話題で笑う。
彼女たちの笑顔越しに見る大きな窓からは、冬の陽ざしを柔らかく感じた。
帰り道を冷たい北風に逆らいながら歩く。
でも、お腹の中に入ったお弁当はまだぽかぽかと温かい。
600円ではとても交換できないもの。
食卓を囲んでいると、それぞれに抱える事情があるなかでこの活動に取り組んでいることが、自然と伝わってきた。
どんな食事もそうだけれど、次も当たり前にいただけるわけではないのだ。
それでも、また一緒に食べたいな。
次は、私から先に「ありがとう」って言いたいな。
こんな時間をまた過ごしたいな。
<<3月26日>>
3月とは思えない汗ばむ陽気。
まだ花が残る梅の木の間から、春の風がふわりと吹いてくる。
「まだ自分の時間を探しているの?こんな近くにあるのにね」
と教えてくれたような気がした。
ちょっと難しく考え過ぎてしまったのかもしれないな。
みんなの飾らない笑顔を思い浮かべながら『ぶんじ寮』へ向かう。