胡桃堂喫茶店

特集・弥生篇[令和七年]自分の時間を生きていると感じられるとき

動物園

カエサザル進藤

学校が嫌いな子供だった。
何かと理由をつけては学校を休みたがった。
うまいこと学校を休めた日には、一日中、絵を描いたり折り紙をしたりして過ごした。
大きなカレンダーの裏が真っ白だったので動物園にした。
色々な動物を折り紙で作って、カレンダーの裏に動物園マップを描いて並べた。
紙がすぐに足りなくなったので、これから来る月のカレンダーも剥がしてしまった。
四畳半の畳の上に増殖していく動物園。
好きだったのは亀の折り紙。
工程が多くて複雑だったから折るのが大変だったけど、
きれいにできたときの達成感は馬や象の比ではない。

 

部活動が嫌いな中学生だった。
何を間違ったかバスケットボール部なんてものに入ってしまった。
背が高くなりたかったのか。
辞めさせてくれと言ったのに、辞めさせてもらえなかった。
だから何かと理由をつけては部活をサボった。
ためていたお年玉でエレキギターを買った。
音楽仲間がひとりできた。
長髪だった。僕は丸刈り。
公民館を借りてふたりでコンサートを開いた。
はじめて人前で演奏した。
甲斐バンドの曲。

 

朝が嫌いな高校生だった。
毎晩のように深夜ラジオを聞いていた。
午前中はいつも眠くて不機嫌だった。
一生夜が明けなければいいのに。
学校帰りによく友人とゲームセンターに行った。
ペンゴというゲームが得意だった。
あまりにも上手くてなかなか終わらないので、
僕がペンゴをはじめると友人は別のゲームの卓に行ってしまう。
ダブルラジカセを買ってギターの多重録音をした。
録音を重ねるとだんだんスピードが速くなってしまうので、
その都度チューニングを合わせるのが大変だった。

カエサザル進藤(カエサザルしんどう)

カタカナ+苗字っていうペンネームをみんな持ってて、ちょっとうらやましくなりました。だけどみんなの漢字部分は、苗字じゃなくて駅名だったことに気がつきました。そしてカタカナ部分は食品名でした。気がついたんだけど、この名前が気に入ってしまったので、そのまま使ってみることにしました。