胡桃堂喫茶店

[12.12]
【チャリティディナーイベント】
かもまい応援ラボ

2019年12月2日更新

みなさま、こんにちは。
スタッフの鈴木です。
   
先日11月8日、
お店のスタッフ有志2人と
まちの仲間、お2人と一緒に
千葉県山武市にある被災農家さんと
その支援をされている方にお会いしてきました。
    
今年は特に東日本にとって大変な年でした。
3つの台風、台風15号、台風19号、台風22号が
9月から10月にかけて東日本を連続的に襲いました。
   
その中で、台風15号による被害がとりわけ大きかった千葉県。
「記録的豪雨」「大規模停電」
千葉の状況を伝えるニュースが連日報じられました。
   
被害を受けたのは千葉だけではない。
でも何が一番大事か、有効かと考え出すと
動けなくなることが往々にしてあります。
縁のあるところから、
自分たちにできるところから動き出そう。
   
今回のブログでは、そのお話を。
長くなりますが、
どうか、おつきあいくださいませ。
   

   
ことの始まりは、
お店の仲間で、建築家の
平野智子さんが繋いでくださったご縁にあります。
   

   
平野さんが大学時代に同期だった、美濃輪朋人さん。
そして奥様のなぎささん。
現在は千葉県山武市にて、
「Minowa Rice Field」という
合鴨農法を利用した畑で無農薬米を作られています。
作られたお米は「かもまい」と名付けられ、販売されています。
HP→https://minowaricefield.stores.jp/about
   

   
そんな美濃輪さんも、
9月9日に千葉を襲った台風15号の影響で
被害を受けた農家のおひとり。
    
台風15号で千葉県は甚大な被害を受けました。
特に大きかったのが、停電による被害。
Minowa Rice Fieldがある山武市は特に復旧まで時間がかかり
上陸後9日が経った9月18日でも、約6,900軒が停電。
    
Minowa Rice Fieldもその例外ではなく、
収穫したお米を貯蔵するための冷蔵庫が使えなくなってしまいました。
昨年(2018年)に収穫したお米が、通常通りの保存が不可能に。
正規価格では販売できなくなってしまったのです。
   
そこで、そうした事情を理解してくれる人に
そのお米をお分けし、かわりに寄付を募るやり方を考えました。
そしてその寄付を、他の生産者支援にも活用することを考えました。
   
それを知った平野さんが
店主・影山に相談をしてくださり、
私たちのお店でも「かもまい」を使う運びとなったのです。
    
あわせて、少しでも寄付を届けたいとの想いから、
平野さん、平野さんのパートナーで料理人の石橋さんと
胡桃堂喫茶店とで
チャリティイベントを企画することに。
そのためにも現地の状況を自分たちの目で見ねばと
山武市を訪ねることにしました。
   

   
山武市で農業を営む、船木さん
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今回私たちが訪れたのが、
千葉県山武市で農業を営まれる、船木さんの畑。
   
船木さんは21歳のころから30年以上農業に携わられており、
現在は5箇所に点在する、合わせて3町歩(東京ドーム半分くらい)の範囲で
トマトや人参、スイカや水菜など、様々な野菜を育てられています。
   
少し前まで受け入れていた農業実習生と作業をしていたそうですが、
現在はお一人で畑を見られているそうです。
   
そんな船木さんも、今回の台風で大きな被害を受けられた農家さんの一人。
畑には、台風被害の跡が色濃く残っていました。
   

     
   
22棟のビニールハウスが全壊…。
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風により大きく曲がってしまったビニールハウス。
台風15号(9月9日上陸)によって、骨組みごと曲がっています、
    

こちらは台風19号(10月12日上陸)によって被害を受けたビニールハウス。
15号の被害を受けて、19号が上陸する前に
覆っていたビニールを一部はがしたそうです。
大雨により中の野菜はダメになってしまいますが、
ビニールハウスの骨組みを守るための決断だったとのことです。
    

船木さんの畑では、計22棟ものビニールハウスが破損。
問題は金銭的な被害だけではないとは思いますが、
ビニールハウス1棟建てるには材料費40万円+組立費20万円
もの費用がかかるそうです...。
    
しかも、多くの農家さんに被害があったことで、
ビニールハウスの需要が高まり、
材料、組立人員も足りていないのが現状。
船木さんは1ヶ月かけて、ご自身で建てたそう。
ただ普通は、ひとりではできないそうです。
    

半月遅れで、なんとか種まきをできた水菜。
台風が来たとはいえ、
元から予定していた作業がなくなるわけではなく、
優先度をつけて朝から晩まで動いておられるとのことでした。
    
   
収穫できなかった野菜たち
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前述した被害を受けたビニールハウス、
22棟全てでトマトを育てていました。
ただ、台風で木自体がダメになってしまったり、
赤い実をつけていても、他の作業との兼ね合いから収穫できなかったりと、
全体の5分の2程度しか出荷できなかったそうです。
    

    
木になっていたトマトを一つ頂きました。
船木さんから「木で完熟したトマトの方が、スーパーに並んでいるものより美味しいんだよ!」
と教えてもらいました。
確かに、香りが強くて、とってもおいしかったです。
    

    
食べられた筈のトマトが落ちている姿を見ると、心が痛みます...。
    
   
災害に強い農業ネットワーク作りを ―チバベジ
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今回の被災生産者の訪問を取りまとめてくださった
「チバベジ」の鳥海さんと安藤さん。
    
「チバベジ」とは、
“2019年9月9日の台風第15号被害で流通できない農作物と農家を救い、
被災農家と支援する人々の『つながり』を深めていくことで、
「被災対応型の農業6次産業」「フードロス」食い止める
持続的農業支援プロジェクトです “

-チバベジ クラウドファンディングページより
https://motion-gallery.net/projects/chiva_vege
    
現在、チバベジさんは具体的には
・傷がついた野菜を、近隣飲食店に出荷
・傷がついた野菜を買い取りし、ピクルスなどの加工品として販売
といった活動をされています。
    
船木さんからも、多くの傷ついたトマトを買い取られたとのことでした。
    
   
3度の台風が意味すること
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台風による大雨は、畝(うね:細長く直線状に土を盛り上げた所のこと)を流し、
作物が野ざらしにされてしまいました。
写真の人参は、なんとか畝があったことで被害を逃れましたが、
野ざらしになると、葉に近いオレンジ色の根が緑色になってしまい
商品として出荷できなくなってしまいます。
    
9月10月に千葉を襲った、3度の台風。
大雨、強風、そして停電により大きな被害が出ました。
    
チバベジさんがとてもわかりやすく
3度の台風による影響を説明してくださっています。
    
“台風15号(9/9)で、野菜は傷つきました。
この時点では、キズもの野菜として売ることができました。
ですが、、、台風19号(10/12)で、
野菜は暴風雨を浴びて販売できるものではなくなりました。
農家はビニールハウスの枠組みを守るためにビニールを外さざるを得ず、
収穫可能な野菜は暴風雨で全滅しました。
ただ、、、台風19号(10/12)時点ではまだ苗のままの野菜や、
大根や人参など根菜は対処のしようがありました。
土が乾けば、収穫もできました。
そして、台風21号(10/23)は、
苗を流し、多くの畑から畝を流し、根菜も野ざらしとなりました。
豪雨で大量の水を含んだ畑で収穫することは出来ず、
野ざらしの根菜は日差しを浴びて痛みが進んでいった結果が今です。
そして場所により被害状況も様々で、
農家さんとの繋がり作りも非常に困難でもあります。
3度の台風で何とか残っているのが、現在の野菜です。
この野菜をどのように効率的に集荷して、
より効果的な農家支援につなげていくのが、
チバベジの役目です。”

−チバベジ クラウドファンディングページのアップデート
「農家訪問、3つの台風が農家に与えた現状」より
    
   
自然相手に働くということ
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ただでさえ、近年厳しくなる国内農業の状況。
それに加え、今回の甚大な台風被害。
70代が中心という山武市周辺の農家さんの中には、
今回の被害をきっかけに
農業そのものを辞める人も出てきているそうです。
    
「50代でも、農業を諦める人もいる」と船木さん
ビニールハウスは、1回立てると20年は持つもの。
今回新しいものを立てると、70代まで続けることになることに躊躇し、
辞める決断をされる方もいるそうです。
    
そんな中で船木さん、野菜を作るための技術を磨かれ、
畑のあちこちには、独自の工夫が見受けられました。
    
そのうちの一つが、こちらの自家製・籾殻くん炭器。
    

    

近くのお米農家さんから籾殻を購入し、ご自身でくん炭にし、
それを畑の土に混ぜ込んでいるとのことです。
    
そして個人的に印象的だったのが、
畑のことのみならず、山武市の農業事情、
広げて千葉県の農業についてお聞きしても、
必ず「〇〇だと思う」とご自身の意見を返してくださったこと。
    
いろんな方向にアンテナを張って、
情報収拾をされているのだろうなと感じました。
    

   
千葉県の農家さんたちを、
地域で支える仕組みづくりをしている、前述のチバベジさん。
「ここ最近、休んでいないですね」と安藤さん。
   
そんなお二人のお話を聞いて、心動かされずにはいられませんでした。
    
   
千葉被害は他人事ではない
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台風22号の前夜、私の家近くのスーパーから、食料がほぼ消えていました。
東京都の多くのスーパー、そしてコンビニが似た状況だったと聞きます。
食料を買うのに、私たちがいかに
スーパーやコンビニ、そしてお金に依存しているか
顕著にわかる出来事だったのではないでしょうか。
    
千葉県の農業出荷量は全国4位(2017年)。
そしてその多くが、首都圏へ向けて届けられています。
千葉の農家さんが減ることで困るのは
東京に住む私たちでもあるわけです。
     
今後もきっと来るであろう「数十年に一度」級の自然災害に対して、
私たちがどう付き合っていくのか、
考える必要があると深く感じました。
    
   
国分寺と山武市
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国分寺と山武市。
地理的には決して近くはないですが
私たちが想いをつなぐことが重要だと考え、
今回、被災農家さん支援と
今後の災害に強いネットワークを作りの少しでも力になりたく、
12月にチャリティイベントを開催します。
    
イベントでは、料理人の石橋さんによる
かもまいと合鴨農法で活躍した鴨のお肉を使った料理と、
胡桃堂喫茶店スタッフによるデザート、珈琲を楽しんでいただきながら、
今回の千葉県の災害、そして今後来るであろう災害と、農業について
皆様と考える時間になればと考えております。
当日は、Minowa Rice Fieldの美濃輪朋人さん・なぎささんも
おいで下さる予定です。
    
本イベントの売上は、経費を除きまして、
全て千葉の農家さんの元へ寄付いたします。
もしご予定合えば、ぜひご参加ください。
    
▽イベント詳細はこちら
【日時】12月12日(木)19:30~21:00
【場所】胡桃堂喫茶店
【参加費】お一人5,000円(税込)
【内容】お食事(かもまいを使ったお料理、お米のデザート、珈琲)、みんなで話す時間
【定員】25名ほど
【お申し込み】https://airrsv.net/kurumido2017/calendar/menuDetail/?schdlId=T000EBA6BD
    
   
あとがき
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まずはじめに、本当にお忙しい中、今回の千葉訪問の機会をつくってくださった
美濃輪朋人さん、なぎささん
チバベジの鳥海さん、安藤さん
山武市の農家、船木さん
     
そして一緒に企画を支えてくださっている、
平野さん、石橋さん、生本さん、
そして自分がアルバイトという立場にも関わらず
アクションの背中を押してくださった影山さん、胡桃堂喫茶店のみなさま、
本当に感謝しています。
ありがとうございます。
    
今回のイベントを企画した想いを少しだけ書かせてください。
    
災害が起きた時、いつも心が痛みます。
日本だけでも、昨年の西日本豪雨や北海道豪雨、今回の3度の台風。
世界に広げると、地震や竜巻、豪雨の影響を受けている人たちが沢山います。
そうしたニュースを聞くたびに、自分の無力さと、ちっぽけさと、
困っている人たちの力になれていないもどかしさを感じるのです。
    
確かに、自分には自分の日々の営みがあって、体は一つしかありません。
全ての災害に対して、力になれるわけではありません。
でも、それでもできることはきっとあるはず。
     
力になれないもどかしさがいつもありますが、
だからこそ、今回のようなご縁があった時にもこれからも
何かすっとアクションが起こせる自分でいたいと思っています。
    
僕の好きな詩に、米国のユダヤ人作家エリ・ヴィーゼルさんの
「無関心」という詩があります。
     
今日我々は知っている。
愛の反対は憎しみではない。
無関心である。
信頼の反対は傲慢ではない。
無関心である。
文化の反対は無知ではない。
無関心である。
芸術の反対は醜さではない。
無関心である。
平和の反対は戦争ではない。
平和と戦争に対する無関心である。
無関心が悪なのである。
無関心は精神の牢獄であり、我々の魂の辱めなのだ。
    
今回のチャリティイベントも、大きなところからすると、
とっても小さなものかもしれません。
それでも僕は、その小さな力を信じて、歩んでいこうと思います。
    
いつも支えてくださっている皆様、
改めて、ありがとうございます。
   
鈴木 弘樹
胡桃堂喫茶店 / クルミドコーヒー スタッフ