胡桃堂喫茶店

特集・霜月篇[令和七年]共に暮らす

家を出て彼と暮らす娘へ

齋藤るる

先日、娘が急に彼と暮らすと報告して来ました。
私は、娘からは彼氏がいることさえ聞かされていなかったので、突然のことで驚きました。
それに、少し寂しい気持ちもありました。
しかし、それよりも小さな大事なことに気づきました。

娘が、
「お母さん。私が彼と暮らしたら、お母さん、
私と彼の家に、しょっちゅう来ちゃうよね?」と言うのです。

私は娘から図々しく節操のないおばさんだと思われているのかと感じ、少しショックに思いましたが、
それよりも、大事なことが娘に伝わっていなかったことに気づいたのでした。
私は娘に言いました。

「あのね、年寄りは若い者の家におしかけたりしないものなのよ。」

「え?そうなの?」

「そうよ。
行くのは、若い者が年寄りの家に行くの。
正月の1月2日とか、節句の5月5日に実家に挨拶にいくっていうようにね。」

私は、結婚して26年間、若夫婦の立場を経験してみたけれど、この昔のやり方は良いなあと、ずっと思っていました。
また、これから年寄り夫婦になる立場を想像しても、いいんじゃないかなあと想像します。

どんな点がよいかというと、まず、行く日が決まっているというのは、わかりやすいし、一見、不自由なようだけれど、互いの力関係に関係なく行き来が決められる。
また、会う日、自由な日の区別がはっきりすることで、互いの暮らしを尊重できる。
毎年、繰り返し会うことで、互いの成長を感じられる。
思い出が共有できる。
人生、じゅんぐりなんだな、ってわかる。
年寄の子どもたち=きょうだいの家族同士が実家で毎年会うことにもなりやすいから、いとこ同士が会えることにもなり、愛が続いて広がる。
などなど。本当に、いいことづくめだなあ、と想像します。

ただ、うちは、アパート暮らしだから狭すぎるので、その点は工夫が必要かしら。
あと、今の若者は忙しいから日程を決めると言ってもどうだろう、とも。
まあ、そのあたりは工夫をしつつ、要は、お互いの生活を尊重しながら、心を伝え合え続けられればいいなぁって私は思います。

結論。
お母さんは、おしかけたりしないので、安心して彼と暮らしを作ってくださいね。

お母さんより

齋藤るる

西国分寺在住。好きなメニューはクルミドティーと赤米定食。優しい夫と、爬虫類好きな長女、アーティストを目指す次女との四人暮らし。困ったことを解決するのが好き。モットーは「愉快にたのしく努力する」。


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