Sさん行きつけのカフェで一緒にお昼を食べた。
「ここは毎月のその月だけのブレンドがあるんです。
今月はクリスマスブレンドね。
12か月全部飲んだ中で、私は6月の紫陽花ブレンドが一番好き。」
Sさんは言った。
紫陽花ブレンドってどんな味なのだろう?
「来年一緒に飲みましょう。」
楽しみにしていた。
翌年コロナが蔓延して、会う機会がないまま6月が過ぎた。
秋に重い病気が見つかって、Sさんは次の年の6月に帰らぬ人になってしまった。
まだ50代なのに…信じられなかった。
初めて紫陽花ブレンドを飲んだ。
お世話になってばかりだった、もっと話しを聞きたかったのに…。
今年も6月にお店を訪ねた。
心の中でSさんに聞く。
「紫陽花ブレンドのお味はいかがですか?」
ご夫婦で営業している小さなカフェ、これからも長く続いてくれますように。